2007/12/02 Sun [長年日記]
夜明けの街で
不倫の話と思いきや、過去の殺人事件が絡んできて、最後には意外な結末がありながらもふと気持ちが通じる所もありストーリーは抜群です。複雑な感情のせめぎ合いの描写も秀逸でとても面白かったです。
ただ、従来の東野圭吾作品とはちょっと違った雰囲気があって、村上春樹の書く作品の様に、女性の思考のリアリティの無さが目につきました。ただ、私はそういうのが嫌いではないですし*1、基本的に狂気の話であって、状況的に普通の感覚というのを維持していて当たり前とは思わないので、話の締めくくり方を考えれば見事とさえ思いますし、切ないとさえ感じました。
私は基本的に受動的に小説を読む質で、客観的に犯人は誰かとか動機は何かとか考えるより、感情移入して読むのが好きなんですが、もうちょっと推理しながら読めば良かったと後悔したぐらいです。
*1 村上春樹好きですしね。雰囲気的には国境の南、太陽の西やスプートニクの恋人っぽい。
2007/12/03 Mon [長年日記]
21世紀の国富論
米国に右習えで、必ずしも正しく企業の収益性を表しているとは言えない指標だけを追いかけて、企業を弱体化させていく愚かさや、その指標に惑わされる滑稽さの指摘に始まり、ヘッジファンドの不健全な影響力への警鐘、それに続く会社は株主だけのものではないという、普通に考えれば導きだせそうなのに、舶来信仰や概念の難しさなどから自分で考える事より喧伝される流行語に惑わされ混乱する企業経済、株式市場を鋭く指摘していて、納得させられる部分が多くありました。
その他、日本の明るい将来を目指す為に目をつけるべきもの等、色々と提言されている。その提言に対しては、正直私はあとがきで正されている様に、その提言に対して机上の空論っぽいとか現実不可能な話と言う印象を持ったのですが、著者はそうではないと自負されています。まぁ、それは各人が将来見極めれば良い事ですし、将来を予測する事ほど難しい事は無いので、特に気にはなりませんでしたが。
しかし、賛意を持って解釈してみればそれ以外に道がないとも言えます。果たして、今後日本が斜陽にならず栄えるという前提でどうしたらいいかと考えると、正直何も思い浮かびませんから。
もっとあまのじゃくに考えれば、今後日本が栄えていくなんて話が、現実性の無い机上の空論である事の裏返しであるのかもしれません。
2007/12/04 Tue [長年日記]
ケータイ小説
ケータイ小説は文章が稚拙だけど、そのお陰で感情や時間の描写を各自で想像できるから、各々が適当につじつま併せて納得し受け入れられるんだと思う。良い方に例えるなら印象派の絵画みたいな物。
だから、脈略がなかったり決定的な矛盾や嘘があって、それに気付いたとしてもそれは記号化されているから気にならない。想像上のファンタジーみたいな物だから現実考証を引き合いに出しても、それは「ほうきでは空飛べませんよね」と言ってるのと同じ。
きっと、初めから小説として本屋で売ってたら駄目だったけど、対価無しで暇つぶしに文章のかけらを読んで想像するというサイクルが良かったんだと思う。そうして評価されると文章力以外にも読む価値が出てくるし、描写が稚拙なほど映像化の制約も少なくなる。
今後、色々な作家がリライトしたりしても試みとしては面白いんじゃないかと思う。
2007/12/05 Wed [長年日記]
機動警察パトレイバー
漫画版です。パトレイバーと言えばゆうきまさみだと思ってたんですが、彼が原作という訳ではなくて、メディアミックスの企画物だったんですね。漫画版はゆうきまさみ担当で基本的にストーリーを作ったんでしょうか?その辺りがよくわかりませんが。
それはそれとして、とても面白かったです。1巻が全然面白く無くて、昔だったから評価されたのかなぁとか思ったんですが、2巻ぐらいからぐんぐん面白くなってきてあっと言う間というほどでもないですが、面白く読めました。
細かい事を言うと、主人公や特車2課の視線で描写されていて、全体的な構図の解説や、伏線の解決等はなくて読み終わった後に気になる感じはあります。バドの事や、リチャード王(内海)は何者だったのかとか、シャフトの目的とか、SSSの人が最後になぜあんな事をしたのかとか。
ストーリーとしては日常に戻ってこれからも頑張るぞって感じでそれはそれ良いのですが。しかし、熊耳さんはキーマンっぷりが凄まじかったですね。よく考えると、後半結構無茶苦茶だったように思いますね。
2007/12/06 Thu [長年日記]
めぞん一刻
過去にも読んだ事があるので、読み返しになるんだけど、めぞん一刻はかなりすきな漫画です。
今になって読んでみると、かなり壮大な話で、響子さんの20代のほとんどを語り尽くしてますね。あと、アニメなんかに比べると五代君の苦労人っぷりというか生き下手ぶりはちょっと凄い物があって、響子さんと結婚したから人生逆転だねってものでも無い様な気がしてしまう。
特別五代君が不幸な訳でもないのに、ものすごく暗い。前半ただのスケベ男だったのに、後半は根暗としか表現できない様なスポイルされた人間になってしまって、些細な事でも不幸な話に思えてくる。
あと、終盤の怒濤のくっつけかたも凄い。なにも最後に全員適当に収まらなくても良いだろうにとか思ってしまうぐらいなんだが、そこが高橋留美子さんの良い所だよね。
2007/12/10 Mon [長年日記]
アホでマヌケな米国(アメリカ)ハイテク企業
たぶん、「アホでマヌケなアメリカ白人」をパロってキャッチーなタイトルをつけたんだと思うんだけど、あんまり良いタイトルではないですね。まぁ、タイトルで売り上げが全然違うでしょうから非難する気はありませんけれども。
内容は、副題にあるように失敗した米国のハイテク企業の敗因を解説するという内容で、とってもためになる本です。前述の通りタイトルほどアホで間抜けな例はなく、失敗例を結果論で語ればみんな滑稽に見えるといった程度の認識で良いと思います。
当然、ケアレスミスが大チョンボに繋がる様な失敗例は一つもなく、間違った方向性を続ける、もしくは立て直せない事で自滅する例が多いです。試行錯誤や模倣のアレンジが失敗である事は後に証明される事であって、当時は大真面目だっただろう例がほとんどです。こういった例を検証して今のマーケティングの常識があるのでしょう。
要点だけまとめると、失敗企業が犯す過ちには大抵共通点があって、以下の様な点に集約できると思います。
- ・自社内に競合する製品を複数持ってしまう
- ユーザーはどれを購入すべきか迷ってしまうし、社内のリソースは分散してしまいます。
- ・互換性を維持しない
- 過去の資産や、既存のシェアを失う
- ・コードをスクラッチから書き直す
- エレガントでないコードにも大抵は合理的な理由(バグフィックスや最適化等)があり、再度実装しても品質は大して変わらない(テストが少ない分だけ品質は下がる)上に、時間も浪費する。
- ・技術に疎い経営トップをもつと、正しい判断はまずできない
- 人の考えを聞いて総合的に判断する事しかできず、自分の頭で考える事が出来ない。
- ・利益を独占しようとして、サードパーティーを育てない
- 開発リソースを外部に持てる点や、市場の拡大に貢献してネットワーク外部性を発揮してくれている事を認識していない。
IT系の人は、マーケッター、エンジニアに限らず一度読むと良いと思います。
2007/12/12 Wed [長年日記]
家日和
著者は奥田英朗で、ガールやマドンナの様な短編集。内容もテンポも相変わらずで、期待を裏切らず、くすっと笑わせてくれてとても気分が良くなる。
タイトル通り、家での生活が中心の人物を主人公に書かれているのだけど、ガールやマドンナの様に主人公の世代性別的な縛りは無くて、比較的テーマは広い方だと思う。
私は、「家においでよ」と「妻と玄米御飯」がお気に入りです。
2007/12/16 Sun [長年日記]
風邪
最近は、体調が悪くて元気が無い。
熱が出たけど、それはすぐ下がってお腹の調子が悪いのだけがいつもでも直らない。微妙に痛いんだよね。いつになったら直るのか。
何食べてもおいしく無いし、すっごく地味につらい。寝すぎて頭痛いし。いくら寝ても頭が痛くならない人が羨ましい。もしそうなら15時間ぐらい寝るのに。
2007/12/18 Tue [長年日記]
「伝説の社員」になれ! 成功する5%になる秘密とセオリー
本の内容としては非常に凡庸な物で、目立った物は無いですが、それだけに突飛さを狙ったような内容でも、押し付けがましくもなく、ポジショントークでもなく、現実的でまとまった良い本だとおもいます。
難を言えば、現実味はあるものの、ビジネス本を10,000万冊読んだという煽りがある様に、理論の補強を本から持ってきている物が多く、ビジネス本自体多くの眉唾物がある事を考えると逆に説得力を薄めていると感じる箇所が多い。
どちらかというと、この本の内容をいかに役員、従業員の隔てなく意識してもらうかというのが問題で、実際にはこの辺りの難しさの方が現実問題として顕在化していると思う。
2007/12/19 Wed [長年日記]
太陽の塔
本作が森見さんのデビュー作品だそうです。
この作品で既に今の作風が完成していて、かなり面白い。内容的には何気ない生活を妄想で彩るみたいな調子で、ストーリーの起伏という点では単純で特にヒネリは無いんだけど、とにかく文章で笑わせてくれるし、その笑いもにやりとさせてくれる物でしめしめといった印象の面白さがある。
個人的にはこの本へのAmazonレビューには褒めている物も腐しているものにも違和感があって、京大だからなんだのかんだのとか、古風な文体(私は古風とは思いませんが)っていう所をさも大きな判断基準かの様に評価するきらいは非常にもったいないと思いました。
花の無い男子学生の世間へのひがみや青臭さという要素も笑いとしては面白いのだけど、ストーリーの中心にあるヒロインに袖にされた不器用な人間性というのに単純に共感すれば良いんじゃ無いかと思う。
あと、全然本の善し悪しには関係ないですが、季節的にも今ぐらいの時期に読むのが内容の時期と一致していてちょうど良いですね。
2007/12/28 Fri [長年日記]
ゼロの使い魔
ライトノベルの王道的なお話で、かなりベタ路線でありながらも面白く読めてしまうお話です。
どのぐらいベタかというと、中世ヨーロッパを下敷きに魔法学校をプラスした世界で、ダメ魔法使いの美少女に主人公が使い魔として、現代の日本から召還されてしまい、しかたなくその世界で使い魔として暮らすんだけど、そこはお約束で主人公は強力な能力をもっているし、魔法学校だけあってハプニングには事欠かないという流れ。
内容も伏線やヒネリは殆どなく、良い意味で漫画っぽくて、読んでいる立場からすると先の話は丸わかりなんだけど、それが逆に楽に読めて面白く、キャラ同士のやりとりを楽しむ感じでかなりライト。
あまりに話がまるわかり過ぎて、そんな怪しさ爆発してる状況で特に行動の裏付けも説明もなく恣意的にホイホイストーリー進めるなよと思うものの、なんでもありの世界なので変に思考にリアリティを求めないから楽しいんだと思う。
当然、好き嫌いははっきり別れると思う。
2007/12/29 Sat [長年日記]
大阪ハムレット
少年アシベ等で有名な森下裕美さんの短編哀愁もの。4コマではない。
辛さの中からささいな幸せを見つけたり、人間的に変わっていくような成長物が多い。なので、どん詰まり系の報われない話が多いんだけど、内容的にはすごく不幸というよりは、比較的普遍的な悩みを扱っていてそんなに暗くは無い。
この話の良い所は、一話完結が基本でありながらも登場人物は薄ーく共有していて、ある話では強者でありながらも、その人にフューチャーした話では、その人はその人なりの悩みを抱えたりしていて、薄っぺらさを感じさせない所。
人から見れば些細な事でものすごく悩んでいる人も居るし、逆な人も居る。そんな話を読んでいると人生を俯瞰すると大抵の出来事は些細な事だなぁなんて前向きになれます。
2007/12/30 Sun [長年日記]
似た様な物を作るという行為
車輪の再発明という言葉はソフトウェアに興味を持っている人なら大抵の人は知っていると思うんだけど、最近ちょっとこれが誤用もしくは拡大解釈されすぎていると思う。
単純な一関数のライブラリであったりした場合はそういうケースは多いと思うし、限りなく同様の物を作るのは学習を除けば確かに無駄なコストではあるけど、似た様な物を作るというのは全くそれに値せず、むしろ奨励すべき事であると思う。そしてそれは車輪の再発明ではないと思う。
というのも、ちょっとしたツールや、アプリケーションのプラグインのように微妙な規模の物に関しては、既に似た様な物があるから作らないという空気があって、さらにその中に先に作った人が居るのに似た様な物を作るのは、先に作った人に失礼みたいな空気がある。
そのせいで、いくつかの実装があってその中から良い物が選ばれるという状況が極めて少なくなっていて、競争が無い故になかなか品質が上がらなかったりする。
というわけで、同じ発想に由来する物や同じ問題の解決をするものでも、わずかにでも違うのならガンガン作ったらいいと思うよ。必ず出来上がった物には個性が出てくるから。
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